【特許】特許料追納期限徒過のコロナ理由による回復理由書の書き方

目次

1.特許料の納付期限・追納期限の徒過

 特許出願、審査請求、特許庁による審査を経て、特許権を取得した後は、特許権を維持するための年金を特許庁に支払う必要があります。1回目の支払いは、第1年分~第3年分を、特許査定の謄本送達日から30日以内に一括納付で行います(特許法第108条)。

 第4年分は、特許権の設定登録日から3年後の該当日までに支払う必要があります。期限の考え方を下記に例示して示しています。

・設定登録日

 2018119

 設定登録日はJplatPat等で確認できます。
 (特許法第108)

・第4年分納付期限

 2021119

 設定登録日の月日を記録しましょう。

・第4年分追納期限

 202259

 期日までに支払えば倍額納付で済みます。
 (特許法第112条第1項、第2)

・第5年分納付期限

 2022119

 前年分の年金を納付していないと、翌年分の年金を納付できないことに注意ください
 したがって、この時点で第4年分を納付できないと、原則、第5年分も追納の処理が必要となります。

・第4年分正当理由

 202359

(最大)

 第4年分の追納期限に年金納付できなかった場合に、正当な理由を主張する最大期限の日について詳細は後述します。

  上記に示すとおり、第4年分の納付期限を徒過したとしても、そこから6ヶ月の間は追納期限が設けられ、未だ特許権を回復させることが可能です(但し、この場合には第4年分は倍額納付する必要があります、特許法第112条第1項、第2項)。

 他方、この追納期限も徒過した場合には、原則として、収めた年分いっぱいまでを区切りとして遡及消滅します(特許法第112条第4項)。

 しかしながら、この規定にも例外があり、追納期限に特許料を追納できなかったことに「正当な理由」がある場合には、最大1年間の猶予をもって特許権の回復処理を行える可能性があります(特許法第112条の2第1項)。

 正確には、「正当な理由」の主張は、その理由がなくなった日から2ヶ月期限、又は、上記した最大1年期限の、いずれか先にくる短い期限までですのでその点注意ください(特許法施行規則第69条の2第1項)。

 この「正当な理由」の条件が非常に厳しく、天変地異等の予測困難性が必要とされます。例えば、事務的ミス等では典型的には当該条件を充足することができませんし、理由があったとしても、その証明は非常に煩雑です。

2.期限徒過に対する柔軟な対応

 しかしながら、このコロナ下における期限徒過に関して柔軟に対応するとの発表がありました。

「特許庁への手続について、新型コロナウイルス感染症の影響により、指定された期間内に手続ができなくなった場合には、以下のような例にしたがい、指定期間を徒過していても有効な手続として取り扱うものとします。(令和4年2月10日更新)」

3.特許料追納期限の徒過には回復理由書を提出

 具体的には、特許料追納期限の徒過には、回復理由書を作成して提出することにより対応します(特許法施行規則第69条の2第2項)。

 特許料追納期限の徒過に関する回復理由書の記載例を下記に示していますので、よろしければ参考としてください。

 なお、下記の記載例では、「手続をすることができなかった理由がなくなった日」を委任状等の情報が揃った日としていますが、「手続をすることができなかった理由がなくなった日」の判断は、特許庁での審査の過程で変わる可能性がありますので、あくまで一例とお考えください。

 特許庁の運用では、特許料追納期限の徒過の場合における「手続をすることができなかった理由がなくなった日」を「出願人や代理人が未納に気づいた日」とされる可能性があり、その場合には、上記した2ヶ月期限を徒過する可能性も否定できません。

 いずれにせよ、特許料の未納に気づいた場合には、迅速に納付手続を行うのが好ましいでしょう。

 なお、特許料追納期限の徒過に関する回復理由書はインターネット出願ソフトでの提出はできず、紙媒体での提出となることにもご留意ください。

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【書類名】       回復理由書
【整理番号】      ●●●●●●●●●●
【提出日】       令和●●年●●月●●日
【あて先】       特許庁長官殿
【特許番号】      特許第●●●●●●●号
【特許権者】
  【識別番号】    ●●●●●●●●●
  【氏名又は名称】  特許 次郎
【代理人】
  【識別番号】    ●●●●●●●●●
  【弁理士】
  【氏名又は名称】  ●●●●●
【回復の理由】
1.要約
 本件、特許第●●●●●●●号は、下記で詳細に説明しますとおり、特許法第112条の2第1項に規定されている「正当な理由」に該当します。
 つきましては、本回復理由書と同時に提出した特許料納付書の受理、及び同条第2項の適用を賜るようお願い申し上げる次第です。
2.「正当な理由」に該当すべき理由
 新型コロナウイルス感染症の影響により、出願人の「●●●●●●●●●●●●」の知的財産部が令和●●年●●月●●日から実質的に閉鎖され、該知的財産部の部員が在宅勤務となり、本件の第4年分の年金の未納という事態が生じた次第です。
 令和●●年●●月●●日より在宅勤務が解除され、出願人は上記未納の事態を把握し、直ちに、代理人に第4年分の年金の納付を依頼しました。
 その後、代理人は、種々の調整と書類作成を行い、納付に係る書面を特許庁に提出可能となりました。
3.「手続をすることができなかった理由がなくなった日」とその根拠
(1)ア.手続をすることができなかった理由がなくなった日
 本事件の理由がなくなった日は、令和●●年●●月●●日です。
(2)イ.手続をすることができなかった理由がなくなった日とした根拠
 本件特許第●●●●●●●号に関する個別(包括)委任状を代理人が受領し、かつ特許料納付書等の書類作成に必要な情報が出揃った同日が「理由がなくなった日」であるためです。
                                      以上
【提出物件の目録】
  【物件名】     個別(包括)委任状(及びその翻訳) 1
   【援用の表示】  令和●●年●●月●●日提出の個別(包括)委任状
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