【特許】第2回 簡単に分かる拒絶理由の対処方法(概論)

目次

1.前回のおさらい

 前回(第1回)では、特許庁から通知される拒絶理由の解消において場合分け(パターン化)することで機械的に対処することができる旨、お話ししました。
 パターン化とは、下記の(1)~(4)の過程を言います:
(1).拒絶理由を処理用フローチャートへ当てはめ
(2).処理用フローチャートに基づく拒絶理由解消の方針決定
(3).拒絶理由解消の方針に基づいた解消案の提案、検討、決定
(4).解消案に基づく補正案・意見書案の作成

 今回は、拒絶理由の処理用フローチャート(概論)についてお話しします。

2.拒絶理由の処理用フローチャート(概論)

 拒絶理由には、新規性や進歩性、明確性違反等、種々あるのですが、最初にやることはこれらの詳細な検討ではありません。
 具体的には下記の(1-1)~(1-1)の順番で見ていきます。
(1-1).拒絶理由通知に特許性の示唆があるか確認
(1-2).審査官の指摘の妥当性・失当性の確認
(1-3).審査官の指摘が失当ならば失当である旨を意見書で主張
(1-4).審査官の指摘が妥当ならば拒絶理由を解消し得る補正案等を検討

3.拒絶理由通知に特許性の示唆があるか確認

 拒絶理由通知を受け取ったからといって、特許請求の範囲に記載されている全ての請求項に拒絶理由があるとは限りません。
 つまり、一部の請求項には拒絶理由が無い、と審査官がコメントしている場合があります。
 具体的には「<拒絶の理由を発見しない請求項>」の有無を確認しましょう(下記は例示)。

<拒絶の理由を発見しない請求項>
 請求項2及び3に係る発明については、現時点では、拒絶の理由を発見しない。
 拒絶の理由が新たに発見された場合には拒絶の理由が通知される。

 拒絶理由の無い請求項がある場合には、原則として下記の(1)又は(2)の対応で拒絶理由を解消することができます。
(1-1-1).拒絶理由が指摘されていない請求項の特徴を独立請求項に追加する(追加補正)
(1-1-2).拒絶理由が指摘されている請求項を削除する(削除補正)

 ただし、当該追加補正や削除補正で対応して得られる特許権の権利範囲に不服がある場合には、次のフローの「(1-2).審査官の指摘の妥当性・失当性の確認」を行う必要があります。
 特許権の権利範囲に不服がある場合とは、例えば、下記のような事態を挙げることができます:
 ①.実際に実施又は実施予定している製品やサービスが自社の特許権の権利範囲外である場合に、第三者による製品・サービスの実施を差止めしたり、損害賠償請求することができない事態
 ②.競合他社が実施しようとしている製品やサービスが自社の特許権の権利範囲外である場合に、その競合他社による製品・サービスの実施を差止めしたり、損害賠償請求することができない事態
 ③.第三者に自社の製品やサービスをライセンスしようと検討していても、それらが特許権の権利範囲外である場合には、ライセンスする明確な根拠が無い事態

3-1.拒絶理由が指摘されていない請求項の特徴を独立請求項に追加する(追加補正)

 (1-1-1).拒絶理由が指摘されていない請求項の特徴を独立請求項に追加することに関して、具体的に事例を見ていきましょう。
 事例として、請求項1~4で申請した特許出願に対して拒絶理由が通知され、請求項2及び3に拒絶理由が無い旨指摘された場合で検討します。
 下記の事例では、請求項2の特徴「B」を請求項1に追加する補正を行っています。

●補正前
【請求項1】Aを含む発明X
【請求項2】更にBを含む、請求項1に記載の発明X
【請求項3】更にCを含む、請求項1又は2に記載の発明X
●補正案
【請求項1】A及びBを含む発明X
【請求項2】更にBを含む、請求項1に記載の発明X
【請求項】更にCを含む、請求項1又は2に記載の発明X

3-2.拒絶理由が指摘されている請求項を削除する(削除補正)

 (1-1-2).拒絶理由が指摘されている請求項を削除することに関して、具体的に事例を見ていきましょう。
 事例として、請求項1~3で申請した特許出願に対して拒絶理由が通知され、請求項1及び2に拒絶理由が無い旨指摘された場合で検討します。
 下記の事例では、請求項3を削除する補正を行っています。
●補正前
【請求項1】Aを含む発明X
【請求項2】更にBを含む、請求項1に記載の発明X
【請求項3】更にCを含む、請求項1又は2に記載の発明X
●補正案
【請求項1】Aを含む発明X
【請求項2】更にBを含む、請求項1に記載の発明X
【請求項3】更にCを含む、請求項1又は2に記載の発明X

4.今回のまとめ

 第2回目となる今回は、拒絶理由の処理用フローチャート(1-1)~(1-4)を示し、その中でも「(1-1).拒絶理由通知に特許性の示唆があるか確認」するフローを説明しました。
 拒絶理由通知を受け取ったとしても、一部の請求項には拒絶理由が無い、と審査官がコメントしている場合には最低限度の労力で拒絶理由を解消できる可能性があります。
 ただし、一部の請求項に拒絶理由が無いとしてもその請求項の権利範囲で満足できない場合には、更なる検討が必要となりますので注意が必要です。
 次回は、「(1-2).審査官の指摘の妥当性・失当性の確認」について説明します。
 次回以降は、新規性や進歩性、明確性等に関する各拒絶理由について個別に説明していく予定です。

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