【特許】特許出願の流れを分かり易く解説|発明を権利化するためのステップとは?【初心者向け】
はじめに
新しい技術や画期的なアイデアを思いついたとき、それをいかにして守るかは非常に重要なテーマです。特許制度は、その発明を法律的に保護するための制度であり、第三者による模倣や不正使用を防ぐ強力な手段です。特許を取得することで、その技術を排他的に実施できる権利(特許権)を得ることができます。この記事では、個人や企業が特許出願を行う際に必要な一連の流れを、初心者にも分かりやすく解説していきます。
特許出願の全体の流れ(図解)
1. 発明の整理・特許性の検討
発明の明確化と文書化:最初のステップは、自分が生み出した技術やアイデアが「特許に該当する発明」なのかを明確にすることです。ここでは、発明の内容を詳しく記録し、構成や動作、仕組みなどを図や文章で整理します。重要なのは、その技術が単なるアイデアにとどまらず、技術的な手段として実現可能であることです。さらに具体性があり、誰かがその発明を再現できる程度に詳細である必要があります。
特許要件の確認:特許として権利化するためには以下の3つの要件を満たしている必要があります:
- 新規性:出願時点で公知、公用、公然実施されていないこと。
- 進歩性:同分野の専門家でも簡単に思いつかないような技術的工夫(自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの)があること。
- 産業上の利用可能性:産業での利用が可能な技術(ある程度の再現性)であること。
2. 先行技術の調査
J-PlatPat等による検索:自分の発明と類似した技術が既に存在しないかどうかを確認する必要があります。これを「先行技術調査」と呼びます。日本では、J-PlatPat(特許情報プラットフォーム)という無料のデータベースを利用して、過去の特許出願や登録情報を検索できます。
調査の重要性と戦略:先行技術調査を怠ると、既に出願された技術と重複してしまい、審査で拒絶される可能性が高くなります。特許調査では、キーワード検索、分類コード(IPC、FI、Fターム)による絞り込みなどを活用します。調査の結果、自分の発明の独自性や改良点が明確になれば、次のステップに進む判断材料となります。
3. 明細書等の書類作成
特許明細書の構成:特許出願の際には、願書、明細書、特許請求の範囲、要約書、図面(必要に応じて)などの書類が必要です。「明細書」では発明の背景、課題、解決手段、実施例などを明確に記載します。「特許請求の範囲」は後の権利範囲に直接影響を与えるため、非常に重要です。
「特許請求の範囲」が目次で、「明細書」がその目次の説明、という様に捉えると分かり易いかと思います。
弁理士への依頼も検討:文書作成は自分で可能ですが、弁理士に依頼することで精度が高まり、拒絶リスクも減らせます。弁理士費用は案件ごとに異なりますが、将来的なリターンを考えれば投資と捉えることができます。
4. 特許出願(提出)
特許庁へオンライン(インターネット出願)または書面で出願します。出願が受理されると「出願日」が確定し、その時点から審査に向けたプロセスが開始されます。出願手数料は電子出願で14,000円。紙媒体の場合は高く(手続1件につき2,400円に書面1枚につき800円を加えた額)なりますのでインターネット出願が好ましいでしょう。また、競合の第三者による権利化を回避する目的で、先に出願する必要があり、早めの対応が推奨されます。
5. 出願公開(18か月後)
出願日から1年6か月後、特許庁によって出願内容が公開されます。これは社会全体への情報共有を目的としており、第三者による技術の重複や研究開発費用の重複を防ぐ役割もあります。
6. 審査請求
出願から3年以内に審査請求を行わないと出願は審査されません。請求項数に応じて審査請求料が増加するため、請求内容の精査も重要です。
7. 審査・拒絶理由通知への対応
審査の過程で拒絶理由が示された場合には、意見書や補正書で出願書類に関する反論・修正を行います。ここでも弁理士の専門的サポートが成功率を左右します。
8. 特許査定と登録
特許性が認められたら「特許査定」が出され、所定の登録料を支払うことで特許権が発生します。登録は1~3年分の前納が必要で、請求項数によって加算額があります。
9. 特許権の維持管理と利用
特許権の存続には特許庁への年金の支払いが不可欠です。年数が進むごとに支払額は増加します。また、特許権侵害があった場合には差止請求や損害賠償が可能となります。
まとめ|特許出願は計画的に進めよう
発明の価値を把握し、計画的に手続きを進めることで、特許取得はビジネスを守る強力なツールになります。
POINT:こんなときは専門家に相談を!
- 初めての特許出願で不安がある
- 技術が複雑で文書化に自信がない
- 海外展開も視野に入れている
発明を単なる思いつきで終わらせず、知的財産として守る姿勢が将来の競争力を左右します。
特許出願の対応にお困りの方へ
おりがみ国際特許事務所では、あらゆる分野の特許明細書の作成・拒絶理由の解消に長けた弁理士がサポートする環境が整っております。
特に、お客様が所望する権利範囲のみならず、現在又は将来的に必要となるであろう権利範囲の検討提案や、その権利範囲の取得に関する助言や対応など、あらゆる観点から総合的にサポートすることが可能です。
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