【特許】優先権期限徒過した外国語特許出願(国際出願)の優先権回復の根拠条文等について

1.優先権とは

 ※今回の記事は、弁理士受験生や実務者を想定したものです。勉強や知識の再確認にお役立ていただければと思います。

 日本の特許法では先願主義(簡単に言うと早い者勝ち)を採用しているために、特許出願は可能な限り早期に行う必要があります。
 他方で、開発したばかり又はそのアイデア段階の発明については、更なる試行錯誤と改良が必要、つまり時間が必要です。
 したがって、先願主義と発明の改良とはトレードオフの関係にあります。

 このトレードオフ関係を改善するための制度として、特許法には、優先権という概念があります。
 優先権とは、アイデアの原石段階で先に特許出願(発明イ・ロ)をしておき、その内容を後の後の特許出願(発明イ・ロ・ハ)に含ませることで、先の出願の発明イ・ロについては、先の出願の出願日(先願主義)の利益を後の出願にも与えるという制度です。

 優先権を成立させるための主要件として、先の出願日から1年以内に後の出願をする必要があります。
 仮に、この要件を守れなかった場合でも一定の条件(「正当な理由」(Due Care)があること、特許法第41条第1項第1号括弧書等)で優先権を回復することは可能ですが、その条件は2022年現時点では非常に厳しいものであり、原則として優先権の期限徒過を生じないよう、実務者は非常に注意しています。

2.国際出願の優先権期限徒過とその対処

 この優先権の考え方は、外国語特許出願を含む国際特許出願にも適用されます。
 例えば、米国でした特許出願を先の出願として優先権基礎とし、その後に国際出願を行う場合などが挙げられます。

 ところで、当該国際出願を、先の出願から1年以内に出願できていなかった場合に優先権の回復はできるのでしょうか?

 答えはYesで、この場合には一般的には国際出願の受理官庁に対して、優先権回復の手続を行います。
 国際出願における優先権回復の手続では回復理由が①.Due Care(正当な理由)、又は②.Unintentional(故意でない)の2段階にわかれます。

 ①のDue Careは厳しい基準で、②のUnintentionalは緩い基準です。
 ここで問題となるのが、日本は①のDue Careを採用しているという点です。
 つまり、国際出願における優先権回復の理由が②のUnintentionalである場合には、それが日本では適用できず、日本への国内移行で優先権回復ができないのです。

 このような場合には、日本で改めて優先権回復の手続を行い、「正当な理由(Due Care)」相当であることを別途主張せねばなりません。

 なお、この別途の主張に関しては特許法に該当する条文は無く、特許法施行規則第三十八条の十四が根拠となります

 具体的には、国内書面提出期間の期限日(翻訳文提出特例期間が適用されている場合にはその期限日、国内書面提出期間内に出願審査請求をしている場合には当該請求の日)から1ヶ月以内に回復理由書を提出する必要があります。

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