【商標】事業戦略として商品・サービス商標権を取得しましょう!

目次

事業戦略としての商品・サービス商標

 本サイト及び本記事を参照いただき、ありがとうございます。  以下では、日本での商品商標の事業戦略を示します。これにより、日本での商標権の登録が事業を行うための前提条件であることがご理解いただけると思います。  貴方又は貴社の事業を成功へと導くために、商標権の取得を是非ともご検討ください。

商標の種類

 一般的には、商標の種類として、ハウスマーク(コーポレート商標)、ファミリーネーム(カテゴリー商標)、ペットマーク(商品・サービス商標)、及び技術ブランド商標などが挙げられます。  この中でも、今回は、ペットマーク(商品・サービス商標)の日本での事業戦略についてお話しします。

ペットマーク(商品・サービス商標)

 日本で使用されている商標のほとんどは、典型的にはペットマークです。したがって、日本で事業展開するうえでは、ペットマークの使用方法が非常に重要です。  典型的には、ペットマークを用いた日本での事業展開は、下記の(1)~(8)の順で行うのが好ましいです:

(1).需要者の課題発掘
(2).スローガン・コンセプト・ストーリーの検討
(3).商標(ペットマーク)ネーミングの検討
 (3-1).機能暗示系ネーミング
 (3-2).インパクト系ネーミング
 (3-3).高品質系ネーミング
 (3-4).イメージ重視系ネーミング
(4).ネーミング市場調査
(5).販売経路の検討
(6).認知度・ブランド力向上
 (6-1).価格競争からの脱却
 (6-2).コラボレーションの依頼発生
 (6-3).シリーズ商品の作製及び別商品への商標の使用
(7).第三者の商標権侵害の監視
 (7-1).商標権の侵害の監視
 (7-2).商標の普通名称化の監視
(8).商標権侵害している第三者への警告
 (8-1)差止請求(日本国商標法36条)
 (8-2)使用料の請求

 

(1).需要者の課題発掘

 商品・サービス(以下、商品等とも呼称します)を開発するには、その商品・サービスの需要者が持つ課題を調査する必要があります。

(2).スローガン・コンセプト・ストーリーの検討

 次に、その商品等のスローガン・コンセプト・ストーリーを検討します。  これは、その商品等が対象とする需要者に提供できる価値(品質、信頼、及び経験等)を、商標等で示していくためです。  上記したコンセプトやストーリーが無い商品等は、需要者に提供できる価値において独自性を示すことができず、将来的に、同業他社の類似商品等の出現を防げず、結果として、価格競争に巻き込まれる事態を招来します。  この観点からも、上記したコンセプト等の検討が非常に重要となります。  例えば、トヨタの商標「LEXUS」は、コンセプトとして「EXPERIENCE AMAZING」を示し、かつそのストーリーとして「FOR YOUR LUXURY LIFESTYLE」を示しています。  このコンセプト等を商標「LEXUS」で長年にわたって示したことにより、この「LEXUS」を見聞した人は、トヨタの高品質な高級自動車であって、他社の自動車には無いストーリーを経験をさせてくれると思うことでしょう。  このコンセプト等に好印象を持つ人はLEXUSのファンとなり、LEXUSのコンセプト等が購買意欲を喚起するのです。

(3).商標(ペットマーク)ネーミング

 ペットマークのネーミングとしては、上記した商品等のスローガン・コンセプト・ストーリーをその商品等の需要者に認知し、かつイメージしてもらうために、当該コンセプト等に基づくネーミングが好ましいです。  また、新規のマーケットに関する商品等であれば、対象需要者がその商品等の内容を詳細に認知していないことから、その中身が端的にイメージ可能なネーミングが好ましいです。  また、成熟マーケットに関する商品等であれば、対象需要者がその商品等の内容を詳細に認知していることから、細かいニーズに訴えかけるようなネーミングが好ましいです。  まとめますと、その商品等のコンセプトや、マーケットの状況、及び需要者の状況に応じてペットマークのネーミングを検討するのが良いと考えられます。  下記では、ネーミングの発想手法を示していますので、参考としてください。

(3-1).機能暗示系ネーミング

 例:商品「腕時計」、商標「G-SHOCK」  当該商標は、需要者に、製品の堅牢性(機能)を暗にイメージさせます。

 商品等の特徴・機能を暗示するネーミングが一案として挙げることができます。  特に、この「機能」を示す用語は、専門的な用語でなく、その商品等の需要者が直感的かつ瞬間的に理解可能な用語が好ましいです。  これにより、機能暗示系ネーミングを商標として採用した場合には、需要者にその商品等の機能を間接的にイメージさせ、需要者に好印象を与える効果があります。  ただし、ネーミングとして、機能「明示」系ネーミングを採用しないようにご注意ください。  例えば、温度を維持する手袋の商品について、「恒温手袋」とするネーミングは、その機能等を単に示しただけの商標として、商標登録できない可能性があるためです(日本商標法3条1項3号、15条)。

(3-2).インパクト系ネーミング

 例:商品「牛肉」、商標「キタウシリ」  商標「キタウシリ」の「キタ」は「北」を意味し、かつ「ウシリ」はアイヌ語で「大地」を意味していますが、この「キタウシリ」は、需要者には一般的に馴染みが無い造語です。そのため、需要者に斬新さを印象として与え、インパクトのあるネーミングと認識されます。

 インパクト系ネーミングが一案として挙げられます。  インパクト系ネーミングを商標として採用した場合には、需要者・販売小売店等に認知してもらい易いこと、覚えてもらい易いこと、普通名称化を防止できること、及び模倣品を対策できること等の効果があります。  なお、普通名称化とは、その商標の出所表示機能等が失われることを意味します。  インパクト系ネーミングが模倣品対策となる理由は、第三者がそのネーミングと同一又は類似する商標を使用した場合に、そのネーミングが独特過ぎるために非類似であると主張できる余地を与えない効果があるためです。

(3-3).高品質系ネーミング

 例:商品「自動車」、商標「LEXUS」  この商標「LEXUS」を見聞した需要者は、トヨタの高品質な高級自動車であって、他社の自動車には無いストーリーを経験をさせてくれると認識します。

 高品質系ネーミングが一案として挙げられます。  高品質系ネーミングを商標として採用した場合には、需要者に、その商品等が高品質であり、他社の商品等には無い経験をさせてくれるとの、好印象を与えることができます。

(3-4).ブランドコンセプト重視系ネーミング

 例:商品「ティッシュ」、商標「Ellemoi」  この商標「Ellemoi」を見聞した需要者は、良好な発音印象・アクセントの印象からブランドコンセプトをイメージし、当該商標に好印象を持ちます。  なお、「Elle」はフランス語で「彼女」を意味し、「moi」はフランス語で「私」を意味します。

 ブランドコンセプト重視系ネーミングが一案として挙げられます。  ブランドコンセプト重視系ネーミングを商標として採用した場合には、需要者に、そのブランドコンセプトに基づいたストーリーをイメージさせ、他社の商品等には無い経験をさせてくれるとの、好印象を与えることができます。

(4).ネーミング市場調査

 所定の商品等に関する商標のネーミング案について、その商品等の需要者がどのような印象を抱くか調査を行います。

(5).販売経路の検討

 販売経路は、その商品等のコンセプトに基づいて、限定し、特定するのが好ましいです。

 高級小売から、低級小売まで、あらゆる販売場所で販売すると、価格の相違が発生したり、需要者が持つブランドイメージが変質する可能性があるためです。  そのため、例えば、貴方が商標や商品等のコンセプトを高級なイメージとストーリーで設定しようと考えている場合には、百貨店等の高級な小売店でのみ販売するなどの販売経路の検討が必要です。

(6).認知度・ブランド力向上

 商品等に関する商標の認知度・ブランド力が向上した場合には、下記の効果が期待できます:

(6-1).価格競争からの脱却

 商品等に関する商標の認知度・ブランド力が向上した場合には、当該商標が自他商品等識別機能、品質保証機能、及び顧客吸引機能等を生じ、当該商品の需要者に購買意欲を惹起させます。  需要者は、商品等の属性、例えば品質、機能、及び機構等の詳細を完全に知ることはできず、したがって、商品等の属性に不明確さ(不安)があることを、無意識で感じています。  商標は、その不明確さを補完するのです。  需要者はこの商標によって商品等を信頼して購入することが可能となり、その属性は、当該商品が不明確な競合の商品等との価格競争に巻き込まれることを阻止することができます。

(6-2).コラボレーションの依頼発生

 商品等に関する商標の認知度・ブランド力が向上した場合には、別分野の事業者(有名事業者)からコラボレーションの依頼がある可能性があります。  例えば、貴方が商品で苺を展開している場合には、スイーツを販売する有名事業者から当該苺を用いたケーキを販売する旨の依頼がくることなどが考えられるでしょう。  有名事業者に貴方の商品を使用してもらい、かつ販売してもらうことで、下記の効果が見込めます: (6-2-1).その商品等の需要者とは別の需要者(有名事業者の商品の需要者)の獲得 (6-2-2).その商品等の商標のブランド力の更なる向上(win―winの関係) (6-2-3).マスコミの取材依頼

(6-2-4).商標の使用許諾によるライセンス料収入(日本国商標法30条、31条)

(6-3).シリーズ商品の作製及び別商品への商標の使用

 商品等に関する商標の認知度・ブランド力が向上した場合には、シリーズ商品の作製が望ましいです。これは、当該シリーズ商品にも、商標を使用することで、更なる売上の向上が期待できるためです。  シリーズ商品としては、より高品質なものや、需要者の細かなニーズに応じたもの等が挙げられます。  また、貴方が販売している別の商品に商標を応用して使用することも、商標の顧客吸引機能を最大限に活用する観点から、好ましいです。

(7).第三者の商標権侵害の監視

 商標権の侵害や、商標の普通名称化を監視する必要があります。登録商標の使用を放置した場合には、商標へのただ乗り(Free Ride)、希釈化(Dilution)、汚染(Pollution)、及び普通名称化等のデメリットが生じるためです。  ※詳細は、「日本で登録商標を取ることのビジネス上の利点」も参照ください。

(7-1).商標権の侵害の監視

 商標権の侵害とは、正当理由又は正当権限無き第三者による登録商標又はその類似商標を、指定商品若しくは指定役務、又はこれらに類似する商品若しくは役務に使用することを意味します(日本国商標法2条3項、25条、37条)。  特に、商標権の侵害は、商標が有名になってから生じる可能性が高いです。  商標権の侵害を監視するには、商品等の販売場所の見回り、営業部門等からの類似商標・類似商品発見報告、模倣商品等についてECサイトへの連絡・削除依頼、及び税関への輸入差止申立

(7-2).商標の普通名称化の監視

 マスコミや雑誌等で、登録商標のネーミングが、Registration Markの表示無く普通名称的に使用されているかを監視して、登録商標の普通名称化を防止します。

(8).商標権侵害している第三者への警告

 商標権の侵害をしている第三者に対しては、警告状の送付等で対応します。  第三者の事業の規模に関係なく、徹底的に争い、模倣品を排除する姿勢を示すことが大切です。  ただし、商標権を侵害している第三者が取引相手である場合には、警告状を送付する前に協議を申し込むことも検討するのが好ましいです。  警告状の内容としては、例えば、下記が挙げられます:

(8-1)差止請求(日本国商標法36条)

 現在及び将来の事業の停止請求、又は将来の販売分については商標権を侵害しないよう、予防請求を行う。

(8-2)使用料の請求

 過去から現在までの販売分について、専用使用権許諾(日本国商標法30条)、通常使用権許諾(同法31条)により、使用料請求を行う。

まとめ

 いかがでしたでしょうか、日本での商品商標の事業戦略によれば、日本での商標権の登録が事業を行うための前提条件であることがご理解いただけたかと思います。  事業を行う場合には、商品の出所が貴方又は貴社からであることを示す商標の表示が必要であり、更には、その商標を商標登録により法的に保護することで、安全に事業とそのブランドを守ることが必要です。  貴方又は貴社の事業を成功へと導くために、商標権の取得を是非ともご検討ください。

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