【知財戦略】先に低廉・簡便な実用新案で様子見して特許に出願変更しましょう

目次

1.実用新案権は知的財産権の一つ

 知的財産権の一つに、実用新案権という権利があります。

 実用新案権も特許権と同様にして、明細書、実用新案請求の範囲、図面等の書類を準備して、特許庁に実用新案登録出願(申請)することにより取得を目指します。

 特許と実用新案は、類似の制度ですが、特許の方が、費用や審査の観点で敷居が高いというように認識ください。

 逆に、実用新案制度は、無審査登録主義を採用しているおり、その名のとおり無審査で登録することができますから、迅速な権利取得を優先する場合には、非常に有効な制度です。

2.実用新案権の制約

 実用新案権には、無審査で迅速に登録して権利化できるというメリットがある一方で、権利行使には、実用新案技術評価書に基づく警告などが要件とされる制約(実用新案法29条の2、29条の3)があります。

 上記の他にも、実用新案権の存続期間は実用新案登録出願の日から10年(同法15条)で終了するなど、特許権と比較すると、実用新案権は不安定な権利とも言えます。

 したがって、実用新案権が設定登録された後に技術動向の変化や事業計画の変更に伴い、審査を経た安定性の高い権利を取得したい場合、あるいは、権利についてより長期の存続期間が確保されるようにしたい場合など、特許権の設定が必要となる場合があります。

3.実用新案に基づく特許出願を検討しましょう

 まとめますと、実用新案権は、迅速に取得することが可能であり、権利化後に無効とすることが困難なことから第三者・競合他社の市場参入を牽制するという効果を持っていますが、他方で、法的不安定性も有しています。

 これに関して、実用新案登録出願又は実用新案登録に基づく特許出願への出願変更を可能とする法制度があります(特許法46条1項、46条の2)。

 これを利用することにより、実用新案登録出願から3年は実用新案権による上記のメリットを享受し、その3年の間に、技術動向の変化や事業計画の変更があるかを様子見しつつ、審査を経た安定性の高い権利を取得したい場合、あるいは、権利についてより長期の存続期間が確保されるようにしたい場合に、特許への出願変更制度を活用する、という知財戦略をとることが可能です

 このように、①実用新案権を低廉に迅速取得しつつ、②状況に応じて特許出願に変更という、知財戦略をとることが、費用、迅速性、法的安定性、権利の強さの観点から非常に有効です。

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