【商標】商標権を早期・迅速に取得する方法

目次

1.商標登録とは

 商標登録とは、商標(商品及び/又はサービスに表示等するもの)を、特許庁に対して登録し、商標権を取得する一連の流れを意味します。

 実際に特許庁に対して登録するためには、登録を所望する商標と、その商標と共に使用する商品及び/又はサービスとを記載した書類を作成し、それを特許庁に提出することによって行います。

 現在又は将来的に商品やサービスに使用する登録商標がある場合に、その登録商標と、同一・類似の商標を第三者が使用している場合に、当該商標権に基づいてこれを差止めることが可能となります。

 このように、お客様の事業において、商標を長期間に渡って使用してブランド力(顧客吸引力)を蓄積しつつ、第三者の商標の使用を排除するために、商標登録による商標権の取得は、非常に重要です。

 他方で、日本特許庁の通常審査では商標登録出願から10カ月程度待って初めて特許庁から連絡があります。連絡の内容は、商標登録査定の通知や拒絶理由通知などです。

 登録査定であれ拒絶理由通知であれ、迅速な商標登録のためには早めに連絡をもらうことが重要ですので、今回は、通常審査、ファストトラック審査、及び早期審査の制度比較を紹介します。

2.商標の審査制度比較

商標の審査制度比較を下記の表に示しています。

審査

審査
期間
申請
有無
要件
通常約10カ月 無し
ファストトラック約6カ月 「類似商品・役務審査基準」、「商標法施行規則」、又は「商品・サービス国際分類表(ニース分類)に、全ての指定商品等が該当すること
※以下、「類似商品・役務審査基準」等、と記載
早期約2カ月

・指定商品等の一部を出願商標で既に使用中、又は
・使用の準備を相当程度進めていること

・下記の()()いずれかの権利化緊急性があること
(
)出願商標の第三者による無断使用(又は使用準備)
(
) 出願商標の使用(又は使用準備)に関する第三者からの警告
(
) 出願商標の使用許諾に関する第三者からの要求
(
) 出願商標について外国出願中
(
) 早期審査の申出に係る出願をマドプロの基礎出願予定

・指定商品等の一部を出願商標で既に使用中、又は
・使用の準備を相当程度進めていること

「類似商品・役務審査基準」等に、全ての指定商品等が該当

・指定商品等の全部を出願商標で既に使用中、又は
・使用の準備を相当程度進めていること


※「類似商品・役務審査基準」等…「類似商品・役務審査基準」、「商標法施行規則 別表(第6条関係)」、及び「商品・サービス国際分類表(ニース分類)」

3.ファストトラック審査制度

 ファストトラック審査制度とは、既に「類似商品・役務審査基準」等に開示されている特定の商品及びサービスを、商標登録出願において指定することで、出願から最初の審査結果が判明するまでの期間を6ヶ月程度に短縮できる制度です。

 10ヶ月程度かかる通常審査の期間と比較して、6ヶ月程度かかるファストトラック審査の期間は短く、出願した商標の早期権利化を所望する場合には、是非とも検討いただきたい制度です。

 また、ファストトラック審査では、ファストトラック審査の申請に関する書類が必要ありません。上記条件を満たしている場合には、自動的に通常審査からファストトラック審査に切り替わりますので、出願人の負担がほとんどありません。

他方で、積極表示と呼ばれる「類似商品・役務審査基準」等に非開示の商品やサービスを指定する場合には、本審査制度を利用できませんので注意が必要です。

4.早期審査制度

 早期審査制度とは、下記の条件1~3のいずれか一つを充足すれば、出願から最初の審査結果が判明するまでの期間を2ヶ月程度に大幅に短縮できる制度です。

 ただし、ファストトラック審査制度と比較して、早期審査制度では、条件1~3のいずれか一つを充足せねばなりません。また、商標登録出願に加えて、「早期審査に関する事情説明書」という書類、及び使用証明等の証拠書類の提出が必要となります。

 当該事情説明書には、主に下記の事項を記載します:

<現に使用している場合><使用予定している場合>
・商標の使用者・商標の使用予定者
・商標の使用に係る商品名やサービス名・商標の使用予定に係る商品名やサービス名
・商標の使用時期
※証明書類は必要ないが具体的な年月日を記載する
・商標の使用予定時期
※証明書類は必要ないが具体的な年月日を記載する
・商標の使用場所
※証明書類は必要ないが具体的な住所を記載する
・商標の使用予定場所
※証明書類は必要ないが具体的な住所を記載する
・商標の使用事実を示す書類・商標の使用予定事実を示す書類
・手続補正書を必要に応じて提出・手続補正書を必要に応じて提出

4-1.条件1:

①.指定商品等の一部を出願商標で既に日本国内で使用中、又は使用の準備を相当程度進めていること、及び
②.下記の(a)~(e)のいずれか一つに示す権利化緊急性があること

(a)出願商標の第三者による無断使用(又は使用準備)
(b)出願商標の使用(使用準備)に関する第三者からの警告
(c)出願商標の使用許諾に関する第三者からの要求
(d)出願商標について外国出願中
(e)早期審査の申出に係る出願をマドプロの基礎出願とする予定(「国際登録出願の意思に関する宣誓書」が必要)

<使用者証明1:出願人自身による商標の使用証明例>

・商品パッケージに記載された販売者情報の撮影写真
・他社ウェブサイトの場合には、その(通販)サイトの「特定商取引法に基づく表記」のページの写し
・自社ウェブサイトがある場合にはそのサイト運営者に関するページの写し

※「ライセンシー」とは、商標の使用許可を与えた仮専用使用権者や仮通常使用権者等を指します。

<使用者証明2:ライセンシーによる商標の使用証明例>

・商品パッケージに記載された販売者情報の撮影写真
・他社ウェブサイトの場合には、その(通販)サイトの「特定商取引法に基づく表記」のページの写し
・自社ウェブサイトがある場合にはそのサイト運営者に関するページの写し
・(ライセンシー子会社等の場合)組織図、支配関係を示すHP画面等、出願人との関係性を明示した資料
・(ライセンシー子会社等以外の場合)ライセンス契約書、使用許諾書等、出願人とのライセンス関係を明示した資料

<商標使用証明>

・商標を付した商品やその包装等の撮影写真
・商標を付した役務の提供の用に供する物やその包装等の撮影写真
・商標を付した商品・役務の提供の用に供する物やその包装等のパンフレットやカタログ
・商標を付した商品・役務の提供の用に供する物やその包装等の広告やウェブサイト画面の写し

※なお、出願に係る指定商品等と、使用証明に関する商品等との間の関係は、上位概念と下位概念の関係でよい。例えば、指定商品等が「果実飲料」であるとして、使用証明に関する商品等は「オレンジジュース」でよい。

<商標使用準備証明>

・商標を付した商品やその包装等の作成について、その受発注を示す資料
・商標を付した役務の提供の用に供する物やその包装等の作成について、その受発注を示す資料
・商標を付した商品・役務の提供の用に供する物やその包装等のパンフレットやカタログ作成について、その受発注を示す資料
・商標を付した商品・役務の提供の用に供する物やその包装等の広告作成やウェブサイト作成について、その受発注を示す資料

4-2.条件2:

①.指定商品等の一部を出願商標で既に日本国内で使用中、又は使用の準備を相当程度進めていること、及び
②.全ての指定商品等が、「類似商品・役務審査基準」等に含まれていること

4-3.条件3:

①.指定商品等の全部を出願商標で既に日本国内で使用中、又は使用の準備を相当程度進めていること

4-4.早期審査における商標の同一性

 早期審査における商標の同一性の判断は、不使用取消審判における「社会通念上同一」の範囲より更に狭いため、注意が必要です。
 具体的には、早期審査における商標の同一性の判断基準は下記のとおりです:

<早期審査における商標同一性の範囲>

・字体の相違(例:ゴシック体と明朝体)
・縦横の相違(例:横書きと縦書き)
・文字色の相違(例:黒文字と赤文字)
・大小文字の相違(例:英字における大文字と小文字)
・二段書きと一段書きの相違(二段の改行を無くして一段にした状態)

<早期審査における商標同一性の範囲外>

・言語の相違(例:ローマ字とカタカナ)
・正字と略字の相違
・「図形+文字」と「図形」の相違
・二段書きの一部を一段書きとした相違
・通常書体と図形デザイン化された書体の相違

4-5.早期審査の対象とならなかった場合

 早期審査の対象となった場合には、商標の登録査定や拒絶理由通知が届きます。

 他方、早期審査の対象とならなかった場合には、早期審査の対象とならない旨の通知が届きます。これに関しては、再度の早期審査の申請も可能であるが、早期審査の対象となる要件を満たしていることを確認する必要があります。

 具体的には、早期審査の対象とならなかった場合には、担当審査官に連絡をとって問題点を具体的に特定するのが好ましいでしょう。

迅速な商標登録を望む方へ

 おりがみ国際特許事務所では、商標登録手続に長けた弁理士がサポートする環境が整っております。
 特に、お客様が所望する権利範囲のみならず、現在又は将来的に必要となるであろう権利範囲の検討提案や、その権利範囲の取得に関する助言や対応など、あらゆる観点から総合的にサポートすることが可能です。
 迅速な商標登録を望む方は、遠慮なく弊所までご相談ください。

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