【特許】特許出願の流れを分かり易く解説|発明を権利化するためのステップとは?【初心者向け】
はじめに 新しい技術や画期的なアイデアを思いついたとき、それをいかにして守るかは非常に重要なテーマです。特許制度は、その発明を法律的に保護するための制度であり、第三者による模倣や不正使用を防ぐ強力な手段です。特許を取得することで、その技術を排他的に実施できる権利(特許権)を得ることができます。この記事では、個人や企業が特許出願を行う際に必要な一連の流れを、初心者にも分かりやすく解説していきます。 特許出願の全体の流れ(図解)① 発明の整理➡② 先行技術調査➡③ 書類作成➡④ 出願➡⑤ 出願公開➡⑥ 審査請求➡⑦ 拒絶理由通知・応答➡⑧ 特許査定・登録➡⑨ 維持管理1. 発明の整理・特許性の検討発明の明確化と文書化:最初のステップは、自分が生み出した技術やアイデアが「特許に該当する発明」なのかを明確にすることです。ここでは、発明の内容を詳しく記録し、構成や動作、仕組みなどを図や文章で整理します。重要なのは、その技術が単なるアイデアにとどまらず、技術的な手段として実現可能であることです。さらに具体性があり、誰かがその発明を再現できる程度に詳細である必要があります。特許要件の確認:特許として権利化するためには以下の3つの要件を満たしている必要があります:新規性:出願時点で公知、公用、公然実施されていないこと。進歩性:同分野の専門家でも簡単に思いつかないような技術的工夫(自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの)があること。産業上の利用可能性:産業での利用が可能な技術(ある程度の再現性)であること。2. 先行技術の調査J-PlatPat等による検索:自分の発明と類似した技術が既に存在しないかどうかを確認する必要があります。これを「先行技術調査」と呼びます。日本では、J-PlatPat(特許情報プラットフォーム)という無料のデータベースを利用して、過去の特許出願や登録情報を検索できます。調査の重要性と戦略:先行技術調査を怠ると、既に出願された技術と重複してしまい、審査で拒絶される可能性が高くなります。特許調査では、キーワード検索、分類コード(IPC、FI、Fターム)による絞り込みなどを活用します。調査の結果、自分の発明の独自性や改良点が明確になれば、次のステップに進む判断材料となります。3. 明細書等の書類作成特許明細書の構成:特許出願の際には、願書、明細書、特許請求の範囲、要約書、図面(必要に応じて)などの書類が必要です。「明細書」では発明の背景、課題、解決手段、実施例などを明確に記載します。「特許請求の範囲」は後の権利範囲に直接影響を与えるため、非常に重要です。「特許請求の範囲」が目次で、「明細書」がその目次の説明、という様に捉えると分かり易いかと思います。弁理士への依頼も検討:文書作成は自分で可能ですが、弁理士に依頼することで精度が高まり、拒絶リスクも減らせます。弁理士費用は案件ごとに異なりますが、将来的なリターンを考えれば投資と捉えることができます。4. 特許出願(提出)特許庁へオンライン(インターネット出願)または書面で出願します。出願が受理されると「出願日」が確定し、その時点から審査に向けたプロセスが開始されます。出願手数料は電子出願で14,000円。紙媒体の場合は高く(手続1件につき2,400円に書面1枚につき800円を加えた額)なりますのでインターネット出願が好ましいでしょう。また、競合の第三者による権利化を回避する目的で、先に出願する必要があり、早めの対応が推奨されます。5. 出願公開(18か月後)出願日から1年6か月後、特許庁によって出願内容が公開されます。これは社会全体への情報共有を目的としており、第三者による技術の重複や研究開発費用の重複を防ぐ役割もあります。6. 審査請求出願から3年以内に審査請求を行わないと出願は審査されません。請求項数に応じて審査請求料が増加するため、請求内容の精査も重要です。7. 審査・拒絶理由通知への対応審査の過程で拒絶理由が示された場合には、意見書や補正書で出願書類に関する反論・修正を行います。ここでも弁理士の専門的サポートが成功率を左右します。8. 特許査定と登録特許性が認められたら「特許査定」が出され、所定の登録料を支払うことで特許権が発生します。登録は1~3年分の前納が必要で、請求項数によって加算額があります。9. 特許権の維持管理と利用特許権の存続には特許庁への年金の支払いが不可欠です。年数が進むごとに支払額は増加します。また、特許権侵害があった場合には差止請求や損害賠償が可能となります。まとめ|特許出願は計画的に進めよう発明の価値を把握し、計画的に手続きを進めることで、特許取得はビジネスを守る強力なツールになります。POINT:こんなときは専門家に相談を!初めての特許出願で不安がある技術が複雑で文書化に自信がない海外展開も視野に入れている発明を単なる思いつきで終わらせず、知的財産として守る姿勢が将来の競争力を左右します。特許出願の対応にお困りの方へ おりがみ国際特許事務所では、あらゆる分野の特許明細書の作成・拒絶理由の解消に長けた弁理士がサポートする環境が整っております。 特に、お客様が所望する権利範囲のみならず、現在又は将来的に必要となるであろう権利範囲の検討提案や、その権利範囲の取得に関する助言や対応など、あらゆる観点から総合的にサポートすることが可能です。 特許出願の対応にお困りの方は、遠慮なく弊所までご相談ください。
【特許】国際出願の国内移行に関する願番の取扱
1.国際出願の国内移行に関する願番の取扱 国際出願の国内移行では、国内書面という書類に国際出願番号(PCT/US20XX/XXXXXX)を記載します。 すると、実務上は、国内書面の提出後に、国内用の願番通知が届き、以降はこの願番に基づいて国際出願翻訳文提出書や上申書、意見書等を作成することになります。 では、願番通知が届く前にこれらの書類を作成する場合にはどうするのか、ということが問題となります。2.国際出願番号で書類作成して問題ない 結論は表題のとおり、国際出願番号で書類作成して問題ありません。 余談ですが、日本国内用の願番通知が届いたあとも、国際出願番号で書類作成しても問題ありません(方式的な補正指令などはかからない)。 何かしらの理由で日本国内用の願番が不明な場合には、上記のように対応しましょう。
【特許】外国語国際出願や外国語書面出願の翻訳文等の補正開始時期について
1.外国語特許出願や外国語書面出願の翻訳文 外国語特許出願(外国語のPCT国際出願)の国内移行や、外国語書面出願では、原則としてその翻訳文(明細書、特許請求の範囲、要約、図面)の提出が追加で発生します。 なお、外国語特許出願の国内移行では、外国語の説明が含まれる図面については、その図面とその説明の翻訳を提出するのみでよく(特許法第184条の4第1項「…図面の中の説明に限る。以下この条において同じ。…」)、他方、外国語書面出願では、外国語の説明の含有有無によらず全図を提出する必要があります(特許法第36条の2第2項)、全図の提出がなければ、願書に図面が添付されていないものとみなされ、誤訳訂正書の提出が必要となる可能性があるので注意しましょう。 さて、本題ですが、上記で提出した翻訳文の補正時期には時期的制限が課されることがあるため、下記で備忘録として記載しておきます。2.外国語特許出願や外国語書面出願の翻訳文等の補正開始時期(1)外国語特許出願の翻訳文の補正開始時期について 外国語特許出願の翻訳文の補正開始時期は、特許法第184条の12(補正の特例)第1項に記載されています。 具体的には、外国語特許出願の翻訳文(明細書、特許請求の範囲、図面)の補正開始時期は、国内処理基準時(実務的には、優先日から30ヶ月経過時、翻訳文特例期間がある場合にはその経過時、又は審査請求をしたらその時)と覚えておきましょう。 要約書の補正時期は、特許法第17条の3に記載のとおり、優先日から1年4ヶ月以内と別の法定期限で管理されますので注意が必要です。 また、国内書面自体の自発補正時期は、上記の国内処理基準時に縛られず、国内書面の提出後から可能ですので、この点も注意が必要です。 国内書面自体の自発補正内容としては、発明者の住所や氏名の誤記の修正が挙げられますが、発明者の削除や変更などは別途の書類が必要(IB306や発明者の宣誓書)となるのでこれも注意してください。(2)外国語書面出願の翻訳文の補正開始時期について 外国語書面出願の翻訳文(明細書、特許請求の範囲、図面)の補正開始時期は、翻訳文提出後です(特許法第36条の2第2項、第8項、17条の2第1項)。 要約書の補正時期は、特許法第17条の3に記載のとおり、優先日から1年4ヶ月以内と別の法定期限で管理されますので注意が必要です。 また、外国語書面の表紙となる特許願自体の自発補正開始時期は、特許願の提出後から可能ですのでこの点も注意が必要です。 外国語書面の表紙となる特許願自体の自発補正の内容としては、発明者の住所・氏名の修正・追加・削除や、DASコードの追加等が挙げられます(DASコードの追加については、特許に関する優先権証明書の提出期限内である優先日から1年4ヶ月以内(特許法第43条第2項))。
【特許】国際出願翻訳文提出特例期間や外国語書面の日本語翻訳文の提出期限等の期限備忘録
1.国際出願翻訳文提出特例期間や外国語書面の日本語翻訳文の提出期限等の期限備忘録 タイトルどおり、実務者向け備忘録です。 本件、2023年6月9日付における情報ですので、法改正等により変わる可能性があることに注意ください。2.国際出願翻訳文特例期間の考え方 国際出願翻訳文特例期間は、国内書面(翻訳抜き表紙)の提出日から2ヶ月以内です。 国内書面提出期限の日(優先日から2年6ヶ月の日)から2ヶ月ではないので注意してください。 ※根拠【特許法第184条の4 第1項】(※条文は理解の促進のため所々省略してあります) 外国語特許出願の出願人は、条約第二条(xi)の優先日から二年六月(以下「国内書面提出期間」という。)以内に、前条第一項に規定する国際出願日における条約第三条(2)に規定する明細書、請求の範囲、図面(図面の中の説明に限る。以下この条において同じ。)及び要約の日本語による翻訳文を、特許庁長官に提出しなければならない。ただし、国内書面提出期間の満了前二月から満了の日までの間に次条第一項に規定する書面を提出した外国語特許出願にあつては、当該書面の提出の日から二月(以下「翻訳文提出特例期間」という。)以内に、当該翻訳文を提出することができる。3.外国語書面の日本語翻訳文の提出期間の考え方 外国語書面の日本語翻訳文の提出期間は、優先日から1年4ヶ月以内です。 外国語書面提出の日から4ヶ月では無いので注意してください。※根拠【特許法第36条の2第2項】(※条文は理解の促進のため所々省略してあります)外国語書面出願の出願人は、その特許出願の日(…二以上の優先権の主張を伴う特許出願にあつては、当該優先権の主張の基礎とした出願の日のうち最先の日…)から1年4ヶ月以内に外国語書面及び外国語要約書面の日本語による翻訳文を、特許庁長官に提出しなければならない。4.審査請求期限の考え方 審査請求期限は、本願出願日から3年以内です。 優先日から3年ではないので注意してください。※根拠【特許法第48条の3第1項】特許出願があつたときは、何人も、その日から三年以内に、特許庁長官にその特許出願について出願審査の請求をすることができる。
【システム】Intel(r) Iris(r) Xe Graphicsドライバ更新での文字崩れ対処
1.GPU使用率100%でフリーズ 今回は雑記っぽい話しです。 ラップトップ(ノートPC)で使用しているGPUとして、Intel(r) Iris(r) Xe Graphicsをメインに使用しているんですが、あるときから「デスクトップ ウィンドウ マネージャー」におけるGPU使用率が100%近くに上昇してPCがフリーズする現象が頻発しました。 この問題は、GPUのドライバ更新で解決するとのことでInterのサイトからIntel(r) Iris(r) Xe Graphicsの最新ドライバをダウンロードしてインストールしたのでした。 なお、参考までにサイトURLを下記に示しています。【Intel(r) Iris(r) Xe Graphicsドライバ更新】 問題はここから。 ドライバインストールにより、上記したGPUの使用率100%問題は改善されたものの、別の問題が発生しました。 具体的には、ドライバのクリーンインストールを行った影響か、Windowsのシステムフォントが変更され、全ての文字がRobotoやらNoto Sansに変換されたのでした。 文字潰れやら、やたらカクカクして判読し難いやらで、なんとか解決せねばならなくなりました。2.システムフォントの調整 結論から先に言うと、システムフォントの調整を行い、PCの再起動をかけることにより、上記の問題を解決することができました。 備忘録として下記に手順を示します:(1)[Windows]+[R]キーを押して、「ファイル名を指定して実行」画面を表示させる(2)当該画面で「control fonts」と入力して「OK」(3)ポップアップされたフォント設定画面において「ClearType テキストの調整」をクリック(4)さらに「Clear Type テキスト チューナー」という画面が表示されるので「Clear Typeを有効にする」のチェックボックスをチェックして「次へ」(5)「最も読みやすいテキスト サンプルをクリックしてください(1/5)~(5/5)」という画面が5回出てくるので、感覚で選択(6)さらに、フリーソフトの「Windows10 フォントが汚いので一発変更!」というソフトも使用 一つ改善したら、それによって別の問題が生じるというシステムあるあるですが、一つ一つ調べていけば解決できますね。
【特許】補正書での「補正により増加する請求項の数」記載判断について
1.手続補正書の記載 請求項数が増加した手続補正書を作成しているときに「【補正により増加する請求項の数】」の項目を作るかどうか判断に迷うときがあります。 実務者が迷うマイナー問題ですが、結構重要なのでメモがてら書いておきます。結論から言いますと、判断は下記の(1)又は(2)で分かれます:(1)審査請求書提出「前」に補正書を提出する場合【補正により増加する請求項の数】の記載不要(2)審査請求書提出「後」に補正書を提出する場合【補正により増加する請求項の数】の記載要 「【補正により増加する請求項の数】」の項目は、審査官に請求項が増えたことを教える親切心に基づくものでなく、審査請求費用を増項した請求項数分支払うための形式的なものです。 したがって、審査請求書提出の前後で、「【補正により増加する請求項の数】」の項目の要・不要が分かれます。 下記に、増項補正の例を示しておきます。2.審査請求書提出後の増項補正書の例【書類名】 手続補正書【あて先】 特許庁長官殿【事件の表示】 【出願番号】 特願0000-000000【補正をする者】 【識別番号】 000000000 【氏名又は名称】 特許株式会社【代理人】 【識別番号】 000000000 【弁理士】 【氏名又は名称】 代理 太郎【補正により増加する請求項の数】 3【手続補正1】 【補正対象書類名】 特許請求の範囲 【補正対象項目名】 全文 【補正方法】 変更 【補正の内容】【書類名】特許請求の範囲 【請求項1】 レンズ系を介して書面からの反射散乱光を1次元イメージセンサに受光することで主走査を行い、書面を被覆したハウジングを手送り移動することで副走査を行う書面イメージの入力手段において、該ハウジング内の上部に装着され、その受光面が書面と平行になるように設定された1次元イメージセンサと、書面に垂直でセンサ列方向軸を含む平面に対して傾斜し、かつ該センサ列方向軸と直行した光路面を構成するレンズ系とを備え、該ハウジングの被覆側端部で主走査することを特徴とするハンドスキャナ。 【請求項2】 請求項1のレンズ系を、書面に垂直でセンサ列方向軸を含む平面の左右両側に設けたことを特徴とする請求項1のハンドスキャナ。 【請求項3】 左または右側の受光を選択的に制御する光遮蔽部を該レンズ系の光路内に設けたことを特徴とする請求項2のハンドスキャナ。 【請求項4】 被写体の照明光源を、ハウジング上部に配した1次元イメージセンサの真下に設けハウジングに取付けたスイッチによって、左右両側端部のいずれか一方を照明するための光照射切替を行うことを特徴とする請求項2のハンドスキャナ。【手数料の表示】 【予納台帳番号】 000000 【納付金額】 12000
【特許】優先権期限徒過した外国語特許出願(国際出願)の優先権回復の根拠条文等について
1.優先権とは ※今回の記事は、弁理士受験生や実務者を想定したものです。勉強や知識の再確認にお役立ていただければと思います。 日本の特許法では先願主義(簡単に言うと早い者勝ち)を採用しているために、特許出願は可能な限り早期に行う必要があります。 他方で、開発したばかり又はそのアイデア段階の発明については、更なる試行錯誤と改良が必要、つまり時間が必要です。 したがって、先願主義と発明の改良とはトレードオフの関係にあります。 このトレードオフ関係を改善するための制度として、特許法には、優先権という概念があります。 優先権とは、アイデアの原石段階で先に特許出願(発明イ・ロ)をしておき、その内容を後の後の特許出願(発明イ・ロ・ハ)に含ませることで、先の出願の発明イ・ロについては、先の出願の出願日(先願主義)の利益を後の出願にも与えるという制度です。 優先権を成立させるための主要件として、先の出願日から1年以内に後の出願をする必要があります。 仮に、この要件を守れなかった場合でも一定の条件(「正当な理由」(Due Care)があること、特許法第41条第1項第1号括弧書等)で優先権を回復することは可能ですが、その条件は2022年現時点では非常に厳しいものであり、原則として優先権の期限徒過を生じないよう、実務者は非常に注意しています。2.国際出願の優先権期限徒過とその対処 この優先権の考え方は、外国語特許出願を含む国際特許出願にも適用されます。 例えば、米国でした特許出願を先の出願として優先権基礎とし、その後に国際出願を行う場合などが挙げられます。 ところで、当該国際出願を、先の出願から1年以内に出願できていなかった場合に優先権の回復はできるのでしょうか? 答えはYesで、この場合には一般的には国際出願の受理官庁に対して、優先権回復の手続を行います。 国際出願における優先権回復の手続では回復理由が①.Due Care(正当な理由)、又は②.Unintentional(故意でない)の2段階にわかれます。 ①のDue Careは厳しい基準で、②のUnintentionalは緩い基準です。 ここで問題となるのが、日本は①のDue Careを採用しているという点です。 つまり、国際出願における優先権回復の理由が②のUnintentionalである場合には、それが日本では適用できず、日本への国内移行で優先権回復ができないのです。 このような場合には、日本で改めて優先権回復の手続を行い、「正当な理由(Due Care)」相当であることを別途主張せねばなりません。 なお、この別途の主張に関しては特許法に該当する条文は無く、特許法施行規則第三十八条の十四が根拠となります。 具体的には、国内書面提出期間の期限日(翻訳文提出特例期間が適用されている場合にはその期限日、国内書面提出期間内に出願審査請求をしている場合には当該請求の日)から1ヶ月以内に回復理由書を提出する必要があります。
【知財事務】発信主義又は到達主義が適用される書類の範囲を説明します
1.特許庁が書類を受領したとみなす日時 特許庁は、書類によって発信主義と到達主義を使い分けています。 発信主義とは、簡単に言うと郵便物等の通信日付印の日付で受領したとみなす主義のことです。 また、到達主義とは、特許庁が実際にその郵便物等を受け取った日付で受領したとみなす主義のことです。 発信主義が採用される書類と、到達主義が採用される書類には、それぞれ条件があるので気をつけたいところです。 特に、発信主義が採用されると誤解した書類について、実際には到達主義が採用され、受理してもらえないなどのミスには要注意です。2.特許法第19条が発信主義の根拠条文 標題のとおり、発信主義が採用される書類の条件等は、特許法第19条に記載されています。 具体的には下記のとおりです:「願書又はこの法律若しくはこの法律に基づく命令の規定により特許庁に提出する書類その他の物件であつてその提出の期間が定められているものを郵便又は民間事業者による信書の送達に関する法律(平成十四年法律第九十九号。以下この条において「信書便法」という。)第二条第六項に規定する一般信書便事業者若しくは同条第九項に規定する特定信書便事業者の提供する同条第二項に規定する信書便(以下「信書便」という。)の役務であつて経済産業省令で定めるものにより提出した場合において、その願書又は物件を日本郵便株式会社の営業所(郵便の業務を行うものに限る。)に差し出した日時を郵便物の受領証により証明したときはその日時に、その郵便物又は信書便法第二条第三項に規定する信書便物(以下この条において「信書便物」という。)の通信日付印により表示された日時が明瞭であるときはその日時に、その郵便物又は信書便物の通信日付印により表示された日時のうち日のみが明瞭であつて時刻が明瞭でないときは表示された日の午後十二時に、その願書又は物件は、特許庁に到達したものとみなす。」 このままでは読みにくいので、「()」部分を外し、重要部分を太文字に変更してみましょう。「願書又はこの法律若しくはこの法律に基づく命令の規定により特許庁に提出する書類その他の物件であつてその提出の期間が定められているものを郵便又は民間事業者による信書の送達に関する法律第二条第六項に規定する一般信書便事業者若しくは同条第九項に規定する特定信書便事業者の提供する同条第二項に規定する信書便の役務であつて経済産業省令で定めるものにより提出した場合において、その願書又は物件を日本郵便株式会社の営業所に差し出した日時を郵便物の受領証により証明したときはその日時に、その郵便物又は信書便法第二条第三項に規定する信書便物の通信日付印により表示された日時が明瞭であるときはその日時に、その郵便物又は信書便物の通信日付印により表示された日時のうち日のみが明瞭であつて時刻が明瞭でないときは表示された日の午後十二時に、その願書又は物件は、特許庁に到達したものとみなす。」 上記のとおり、「願書又はこの法律若しくはこの法律に基づく命令の規定により特許庁に提出する書類その他の物件であつてその提出の期間が定められているもの」が、発信主義の対象となる書類です。 このような書類としては、例えば、拒絶理由通知への応答、拒絶査定への応答、出願審査請求書、審判請求書などが挙げられます。3.到達主義の根拠条文も特許法第19条 他方で、到達主義については、実は特段の根拠条文はありません。これは、発信主義に含まれない書類は到達主義で判断されるためです。 したがって、発信主義の対象となる書類の例示は下記のとおりです: 住所変更届、移転登録申請書、名義変更届、国際出願や訴状法定期限や書類管理にお困りの方へ おりがみ国際特許事務所では、法定期限管理や書類管理に長けた弁理士がサポートする環境が整っております。知財に関するお客様の悩みを、あらゆる観点から総合的にサポートすることが可能です。 法定期限の管理や、書類管理にお困りの方は、遠慮なく弊所までご相談ください。
【商標】商標権を早期・迅速に取得する方法
1.商標登録とは 商標登録とは、商標(商品及び/又はサービスに表示等するもの)を、特許庁に対して登録し、商標権を取得する一連の流れを意味します。 実際に特許庁に対して登録するためには、登録を所望する商標と、その商標と共に使用する商品及び/又はサービスとを記載した書類を作成し、それを特許庁に提出することによって行います。 現在又は将来的に商品やサービスに使用する登録商標がある場合に、その登録商標と、同一・類似の商標を第三者が使用している場合に、当該商標権に基づいてこれを差止めることが可能となります。 このように、お客様の事業において、商標を長期間に渡って使用してブランド力(顧客吸引力)を蓄積しつつ、第三者の商標の使用を排除するために、商標登録による商標権の取得は、非常に重要です。 他方で、日本特許庁の通常審査では商標登録出願から10カ月程度待って初めて特許庁から連絡があります。連絡の内容は、商標登録査定の通知や拒絶理由通知などです。 登録査定であれ拒絶理由通知であれ、迅速な商標登録のためには早めに連絡をもらうことが重要ですので、今回は、通常審査、ファストトラック審査、及び早期審査の制度比較を紹介します。2.商標の審査制度比較商標の審査制度比較を下記の表に示しています。審査審査期間申請有無要件通常約10カ月無 無しファストトラック約6カ月無 「類似商品・役務審査基準」、「商標法施行規則」、又は「商品・サービス国際分類表(ニース分類)」に、全ての指定商品等が該当すること※以下、「類似商品・役務審査基準」等、と記載早期約2カ月有・指定商品等の一部を出願商標で既に使用中、又は・使用の準備を相当程度進めていること・下記の(a)~(e)いずれかの権利化緊急性があること(a)出願商標の第三者による無断使用(又は使用準備)(b) 出願商標の使用(又は使用準備)に関する第三者からの警告(c) 出願商標の使用許諾に関する第三者からの要求(d) 出願商標について外国出願中(e) 早期審査の申出に係る出願をマドプロの基礎出願予定・指定商品等の一部を出願商標で既に使用中、又は・使用の準備を相当程度進めていること・「類似商品・役務審査基準」等に、全ての指定商品等が該当・指定商品等の全部を出願商標で既に使用中、又は・使用の準備を相当程度進めていること※「類似商品・役務審査基準」等…「類似商品・役務審査基準」、「商標法施行規則 別表(第6条関係)」、及び「商品・サービス国際分類表(ニース分類)」3.ファストトラック審査制度 ファストトラック審査制度とは、既に「類似商品・役務審査基準」等に開示されている特定の商品及びサービスを、商標登録出願において指定することで、出願から最初の審査結果が判明するまでの期間を6ヶ月程度に短縮できる制度です。 10ヶ月程度かかる通常審査の期間と比較して、6ヶ月程度かかるファストトラック審査の期間は短く、出願した商標の早期権利化を所望する場合には、是非とも検討いただきたい制度です。 また、ファストトラック審査では、ファストトラック審査の申請に関する書類が必要ありません。上記条件を満たしている場合には、自動的に通常審査からファストトラック審査に切り替わりますので、出願人の負担がほとんどありません。他方で、積極表示と呼ばれる「類似商品・役務審査基準」等に非開示の商品やサービスを指定する場合には、本審査制度を利用できませんので注意が必要です。4.早期審査制度 早期審査制度とは、下記の条件1~3のいずれか一つを充足すれば、出願から最初の審査結果が判明するまでの期間を2ヶ月程度に大幅に短縮できる制度です。 ただし、ファストトラック審査制度と比較して、早期審査制度では、条件1~3のいずれか一つを充足せねばなりません。また、商標登録出願に加えて、「早期審査に関する事情説明書」という書類、及び使用証明等の証拠書類の提出が必要となります。 当該事情説明書には、主に下記の事項を記載します:<現に使用している場合><使用予定している場合>・商標の使用者・商標の使用予定者・商標の使用に係る商品名やサービス名・商標の使用予定に係る商品名やサービス名・商標の使用時期※証明書類は必要ないが具体的な年月日を記載する・商標の使用予定時期※証明書類は必要ないが具体的な年月日を記載する・商標の使用場所※証明書類は必要ないが具体的な住所を記載する・商標の使用予定場所※証明書類は必要ないが具体的な住所を記載する・商標の使用事実を示す書類・商標の使用予定事実を示す書類・手続補正書を必要に応じて提出・手続補正書を必要に応じて提出4-1.条件1:①.指定商品等の一部を出願商標で既に日本国内で使用中、又は使用の準備を相当程度進めていること、及び②.下記の(a)~(e)のいずれか一つに示す権利化緊急性があること(a)出願商標の第三者による無断使用(又は使用準備)(b)出願商標の使用(使用準備)に関する第三者からの警告(c)出願商標の使用許諾に関する第三者からの要求(d)出願商標について外国出願中(e)早期審査の申出に係る出願をマドプロの基礎出願とする予定(「国際登録出願の意思に関する宣誓書」が必要)<使用者証明1:出願人自身による商標の使用証明例>・商品パッケージに記載された販売者情報の撮影写真・他社ウェブサイトの場合には、その(通販)サイトの「特定商取引法に基づく表記」のページの写し・自社ウェブサイトがある場合にはそのサイト運営者に関するページの写し※「ライセンシー」とは、商標の使用許可を与えた仮専用使用権者や仮通常使用権者等を指します。<使用者証明2:ライセンシーによる商標の使用証明例>・商品パッケージに記載された販売者情報の撮影写真・他社ウェブサイトの場合には、その(通販)サイトの「特定商取引法に基づく表記」のページの写し・自社ウェブサイトがある場合にはそのサイト運営者に関するページの写し・(ライセンシー子会社等の場合)組織図、支配関係を示すHP画面等、出願人との関係性を明示した資料・(ライセンシー子会社等以外の場合)ライセンス契約書、使用許諾書等、出願人とのライセンス関係を明示した資料<商標使用証明>・商標を付した商品やその包装等の撮影写真・商標を付した役務の提供の用に供する物やその包装等の撮影写真・商標を付した商品・役務の提供の用に供する物やその包装等のパンフレットやカタログ・商標を付した商品・役務の提供の用に供する物やその包装等の広告やウェブサイト画面の写し※なお、出願に係る指定商品等と、使用証明に関する商品等との間の関係は、上位概念と下位概念の関係でよい。例えば、指定商品等が「果実飲料」であるとして、使用証明に関する商品等は「オレンジジュース」でよい。<商標使用準備証明>・商標を付した商品やその包装等の作成について、その受発注を示す資料・商標を付した役務の提供の用に供する物やその包装等の作成について、その受発注を示す資料・商標を付した商品・役務の提供の用に供する物やその包装等のパンフレットやカタログ作成について、その受発注を示す資料・商標を付した商品・役務の提供の用に供する物やその包装等の広告作成やウェブサイト作成について、その受発注を示す資料4-2.条件2:①.指定商品等の一部を出願商標で既に日本国内で使用中、又は使用の準備を相当程度進めていること、及び②.全ての指定商品等が、「類似商品・役務審査基準」等に含まれていること4-3.条件3:①.指定商品等の全部を出願商標で既に日本国内で使用中、又は使用の準備を相当程度進めていること4-4.早期審査における商標の同一性 早期審査における商標の同一性の判断は、不使用取消審判における「社会通念上同一」の範囲より更に狭いため、注意が必要です。 具体的には、早期審査における商標の同一性の判断基準は下記のとおりです:<早期審査における商標同一性の範囲>・字体の相違(例:ゴシック体と明朝体)・縦横の相違(例:横書きと縦書き)・文字色の相違(例:黒文字と赤文字)・大小文字の相違(例:英字における大文字と小文字)・二段書きと一段書きの相違(二段の改行を無くして一段にした状態)<早期審査における商標同一性の範囲外>・言語の相違(例:ローマ字とカタカナ)・正字と略字の相違・「図形+文字」と「図形」の相違・二段書きの一部を一段書きとした相違・通常書体と図形デザイン化された書体の相違4-5.早期審査の対象とならなかった場合 早期審査の対象となった場合には、商標の登録査定や拒絶理由通知が届きます。 他方、早期審査の対象とならなかった場合には、早期審査の対象とならない旨の通知が届きます。これに関しては、再度の早期審査の申請も可能であるが、早期審査の対象となる要件を満たしていることを確認する必要があります。 具体的には、早期審査の対象とならなかった場合には、担当審査官に連絡をとって問題点を具体的に特定するのが好ましいでしょう。迅速な商標登録を望む方へ おりがみ国際特許事務所では、商標登録手続に長けた弁理士がサポートする環境が整っております。 特に、お客様が所望する権利範囲のみならず、現在又は将来的に必要となるであろう権利範囲の検討提案や、その権利範囲の取得に関する助言や対応など、あらゆる観点から総合的にサポートすることが可能です。 迅速な商標登録を望む方は、遠慮なく弊所までご相談ください。
【特許】第4回 簡単に分かる拒絶理由の対処方法(審査官の指摘が不当な場合:新規性)
1.前回のおさらい 簡単に分かる拒絶理由の対処方法シリーズは、初心者向けの拒絶理由通知の対処方法を示しています。 もちろん実務家の方も頭の整理として参照いただけますと嬉しいです。 さて、おさらいですが、第1回では、特許庁から通知される拒絶理由の解消において場合分け(パターン化)することで機械的に対処することができることを示しました。 第2回では、パターン化の最初のフローのうち、拒絶理由(事例)を当てはめるための処理用フローチャートの概論を示し、特に「(1-1).拒絶理由通知に特許性の示唆があるか確認」について具体的にお話ししました。 また、前回の第3回では、「(1-2).審査官の指摘の妥当性・失当性の確認」の概論をお話ししました。 パターン化とは、下記の(1)~(4)の過程を言います:(1).拒絶理由を処理用フローチャートへ当てはめ(2).処理用フローチャートに基づく拒絶理由解消の方針決定(3).拒絶理由解消の方針に基づいた解消案の提案、検討、決定(4).解消案に基づく補正案・意見書案の作成また、拒絶理由の処理用フローチャートの概論とは、下記の(1-1)~(1-4)の過程を言います:(1-1).拒絶理由通知に特許性の示唆があるか確認(1-2).審査官の指摘の妥当性・失当性の確認(1-3).審査官の指摘が失当ならば失当である旨を意見書で主張(1-4).審査官の指摘が妥当ならば拒絶理由を解消し得る補正案等を検討 今回は、引き続き「(1-2).審査官の指摘の妥当性・失当性の確認」についての各論、すなわち、新規性の拒絶理由の妥当性判断について説明します。 まずは、特許法等の意味する「新規性」についてお話しします。 2.特許法の意味する新規性とは 特許権を取得するには、特許出願に係る発明に新規性(特許法第29条第1項各号)があることが必要とされます。 発明の新規性の有無は、この特許出願以前に公開された文献(先行技術文献)等おいて、当該発明が公衆に公開されているかどうかで判断されます。 例えば、下記の事例を見てみましょう。●特許出願の特許請求の範囲【請求項1】Aを含む発明X(Aのみ)【請求項2】更にBを含む、請求項1に記載の発明X(A+B)【請求項3】更にCを含む、請求項1又は2に記載の発明X(A+C又はA+B+C)●先行技術文献(特許出願の出願日前のもの) 「この試作品Yは、Aから構成されている。…また、試作品Yは、更にBを追加することでより良い効果を発揮する」 上記の場合には、請求項1のAを含む発明Xは、先行技術文献Yで既に公開され、それに新規性が無いとみなされます。 また、請求項2の更にBを含む発明Xも、先行技術文献Yで既に公開され、それに新規性が無いとみなされます。 他方で請求項3の更にCを含む発明Xは、先行技術文献Yで既に公開されておらず、それに新規性が有るとみなされます。 このように、特許法の意味する新規性とは、発明の構成要件(上記のA、B、C)の組み合わせが一つの先行技術文献に公開されているか否かで判断されます。 なお、新規性については例外的に「内在同一」などの考え方もあるのですが、これは別記事にする予定です。 3.新規性の拒絶理由の妥当性判断 新規性に関する拒絶理由において、審査官は、ある請求項に開示されている構成要件の全てが、調査した一つの先行技術文献に開示されているから当該請求項には新規性が無い、というような指摘をします。 例えば、下記の例において審査官が「先行技術文献に基づいて、請求項1~3に係る発明には新規性が無い」と指摘したと仮定しましょう。 ●特許出願の特許請求の範囲【請求項1】Aを含む発明X(Aのみ)【請求項2】更にBを含む、請求項1に記載の発明X(A+B)【請求項3】更にCを含む、請求項1又は2に記載の発明X(A+C又はA+B+C)●先行技術文献(特許出願の出願日前のもの) 「この試作品Yは、Aから構成されている。…また、試作品Yは、更にBを追加することでより良い効果を発揮する」 この指摘の妥当性の判断は、実際に当該請求項の構成要件と提示された先行技術文献とを比較した対比表を作成して行うのが好ましいです(慣れてきたら作成の必要は無くなります)。 下記に対比表の事例を示して説明します:対比表対象請求項発明Xの構成要件先行技術文献の構成要件新規性の判断請求項1AA新規性無し請求項2BB新規性無し請求項3C(記載なし)新規性有り 上記した対比表に基づいて判断すると、先行技術文献には構成要件「C」の記載が無く、したがって、構成要件「C」を追加で請求する請求項Cには、新規性があることが分かります。 してみると、請求項1及び2について新規性が無いことは妥当ですが、請求項3について新規性が無いとの審査官の指摘は失当と判断できます。 4.新規性の拒絶理由の指摘が不当・失当である場合の処理(1)新規性の拒絶理由の指摘の「全て」が不当・失当である場合 新規性の拒絶理由の指摘の「全て」が不当・失当である場合には、請求項の修正(補正)等をする必要がありませんので、指摘が不当・失当である旨の意見書を作成して提出するだけで事足ります。(2)新規性の拒絶理由の指摘の「一部」が不当・失当である場合 新規性の拒絶理由の指摘の「一部」が不当・失当である場合には、換言すれば、指摘の一部は妥当なため、請求項の補正が必要となります。 具体的には、指摘が妥当と判断した請求項を補正した補正書を準備し、①その補正の旨と、②その他の指摘は不当・失当である旨とを記載した意見書を作成して提出すれば事足ります。 下記に事例を示して説明します:●補正前請求項特徴【請求項1】 Aを含む発明XA(新規性無し)【請求項2】 更にBを含む、請求項1に記載の発明XA+B(新規性無し)【請求項3】 更にCを含む、請求項1又は2に記載の発明XA+C又はA+B+C(新規性あり)●補正後請求項特徴【請求項1】A及びCを含む発明XA+C※請求項3の特徴Cを請求項1に追加する補正を行い、請求項1の実質的構成は上記のようになる【請求項2】 更にBを含む、請求項1に記載の発明XA+B+C※請求項1の補正の結果、請求項2の実質的構成は、上記のようになる【請求項3】 更にCを含む、請求項1又は2に記載の発明X(削除)※請求項3の特徴Cを請求項1に追加したので、請求項3自体は削除する 上記の事例では、補正前の請求項1及び2に新規性が無い一方で請求項3には新規性が有ると判断していました。そこで、請求項3の登頂Cを請求項1に追加する補正を行うことで補正書を準備します(「●補正後」を参照)。 次に、意見書において、①上記補正した旨と、②請求項3に対する新規性違反の指摘は不当・失当である旨とを記載し、これらの補正書と意見書を特許庁に提出します。 5.今回のまとめ 今回は、審査官の指摘の分析の各論として新規性の拒絶理由の分析についてお話ししました。 新規性違反に関する審査官の指摘の妥当性を評価するには、慣れないうちは、対比表を作成すると好ましいことがお分かりいただけたかと思います。 また、評価の結果、審査官の指摘の「全て」又は「一部」が「不当・失当」である場合における、補正書や意見書の作成方法も説明しました。 次回は、審査官による新規性の拒絶理由の指摘の「全て」が「妥当」である場合の対処方法について、説明します。 拒絶理由の対応にお困りの方へ おりがみ国際特許事務所では、あらゆる事例の拒絶理由の解消に長けた弁理士がサポートする環境が整っております。 特に、お客様が所望する権利範囲のみならず、現在又は将来的に必要となるであろう権利範囲の検討提案や、その権利範囲の取得に関する助言や対応など、あらゆる観点から総合的にサポートすることが可能です。 拒絶理由の対応にお困りの方は、遠慮なく弊所までご相談ください。